タバコがやめられない理由

ニコチン依存症とは?

ニコチンには強い依存性があります

喫煙者の中には、「タバコを吸うと落ち着く」「ホッとする」といった効果を感じる人が少なくありません。でも、それって本当なのでしょうか?

実は、タバコを吸って落ち着くのは、体内のニコチンが切れて「イライラする(ストレス)」ところに、タバコを吸ってニコチンを取り込んだことで、イライラが解消されただけなのです。ニコチンの欠乏と補給に左右される症状は、ニコチン依存症によるものです。

ニコチンは依存性の強い物質です。私たちの周りには、お酒やコーヒーなどの嗜好品があり、それぞれアルコール、カフェインといった依存性物質が含まれていますが、適量であれば健康に問題はありません。ところが、ニコチンは危険薬物のヘロインやコカインよりも依存の危険が高く、しかもニコチン依存症になってしまうと、使用を中止するのは非常に難しくなります。いつでもタバコをやめられると思っていたのに、なかなかやめられないのは、このニコチン依存症が原因なのです。

自分1人で禁煙を続けるのは限界があります。今は、さまざまな禁煙方法があり、病院で医師に相談し、禁煙を続けていく方法もあります。自分に合った禁煙方法を選んでトライしてみましょう。

Royal College of Physicians: "4. Is Nicotinea drug of addiction?" Nicotine Addiction in Britain. A Report of the Tobacco Advisory Group of The Royal College of Physicians. Royal College of Physicians of London: 83, 2000

ニコチンの強い依存症(海外データ)

ニコチンはヘロインと同じくらいやめるのが難しい

各使用者のなかで依存症になる人の割合

ニコチンヘロインコカインアルコールカフェイン

依存症になった人での禁断症状の強さ

アルコールヘロインニコチンコカインカフェイン

依存症になった人でのやめることの難しさ

(アルコールコカインヘロインニコチン)カフェイン

Royal College of Physicians: "4. Is Nicotine a drug of addiction?" Nicotine Addiction in Britain. A Report of the Tobacco Advisory Group of The Royal College of Physicians.
Royal College of Physicians of London: 83, 2000 より作図

タバコがやめられないのは、ニコチン依存性が原因!

では、「今度こそ絶対にタバコをやめる!」と決意しながら、なぜついまた吸ってしまうのでしょうか? 自分の意志が弱いからでしょうか? いいえ、実はニコチンのもつ依存性が原因なのです。

どのようにしてニコチン依存症になるのでしょうか。

タバコを吸うと、ニコチンは脳にあるニコチン受容体に結合します。すると、快感を生じさせる物質(ドパミン)が大量に放出され、喫煙者は快感を味わうことができます。これが、「タバコを吸うと落ち着く」「ホッとする」といった効用が得られるしくみです。しかし、30分もすると体内のニコチンが切れて、反対にイライラする、落ち着かないなどの離脱症状(禁断症状)があらわれます。そして、その離脱症状を解消するために、またタバコを吸うようになり、そうしてニコチン依存症になっていきます。

こうなると、タバコをやめたいと思っても、やめるのが困難になります。ニコチン依存症から抜け出すのは、ヘロインやコカインをやめるのと同じくらい難しいといわれています。禁煙が難しいのは、ニコチン依存症によるものですから、自分の意志の力だけで乗り越えられないのも当然といえるでしょう。

喫煙の健康影響に関する検討会編:喫煙と健康 喫煙の健康影響に関する検討会報告書:平成28年8月
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10901000-Kenkoukyoku-Soumuka/0000172687.pdf 2022/7/6参照

ニコチン依存症に至るまで

1

脳には、ニコチンが結合すると快感が生じる受容体があります。α4β2ニコチン受容体といいます。

2

タバコを吸うと、ニコチンが肺から血中に入り、すぐに脳に達します。

3

ニコチンがα4β2ニコチン受容体に結合すると、快感を生じさせる物質(ドパミン)が放出されます。

4

ドパミンが放出されると快感が生じます。さらに、もう一度タバコを吸いたくなります。

5

(2)~(4)を繰り返すうちに現れる、イライラなどの離脱症状(禁断症状)を避けるため、喫煙をやめられなくなります。

ニコチン依存症

Rollema, H. et al.: Trends Pharmacol Sci 28(7): 316, 2007[L20070717020]より作図
こんな症状が離脱症状(禁断症状)
  • とてもタバコが吸いたい

  • 落ち着かない

  • 気分が落ち込む

  • 食欲が増す

  • イライラ・欲求不満・怒りのいずれかを感じる

  • 寝つきが悪い

  • 不安を感じる

  • 眠っても途中で目が覚める

  • 集中できない

大石 剛子ほか:薬理と治療 33(2):141, 2005

軽いタバコでも中身は同じ

タバコの空気穴

軽いタバコは空気穴が多い 吸うときには指や唇でふさがってしまう
平間敬文:子供たちにタバコの真実を-37万人の禁煙教育から かもがわ出版:59, 2002
より一部改変

低タール・低ニコチンの、いわゆる“軽いタバコ”が人気のようです。そうした人は、軽いタバコであれば、健康被害は少ないと思い込んでいるのかもしれません。

そもそも、タバコのパッケージに表示されているニコチンやタールの数値は、タバコ1本の含有量ではありません。タール・ニコチンのmg表記に関わらず、中に入っているタバコは全く同じです。では数値の違い何なのか?それは器械によって一定量喫煙したときの煙を分析した数値なのです。フィルター部分に空気穴を多くしたり、空気を通す巻紙を使うなどして、吸い込むニコチンやタールの量を薄めているので、測定値が低くなるのです。しかし、実際にはタバコを吸うときに、指で空気穴をふさいでしまっているので、ふつうのタバコを吸っているのと何らかわりません。また、“軽いタバコ”を吸うときは、無意識のうちに、深く吸ったり、タバコを根元まで吸ったりする傾向があるようです。やはり、ふつうのタバコを吸っているのと同じですね。

健康が気になるなら、軽いタバコにするのではなく、思い切ってタバコと縁を切ることを考えてみましょう。

平間敬文:子供たちにタバコの真実を-37万人の禁煙教育から かもがわ出版:59, 2002