タバコによる害

受動喫煙とは何か?受動喫煙が大人に及ぼす健康被害

受動喫煙が原因で年間約60万人が亡くなります

受動喫煙による年間全死亡数(2004年)(海外データ)

全司法数60万3,000人 小児:166,000人 男性:156,000人 女性:281,000人
方法:
2004年の192ヵ国のデータを解析し、小児および成人の非喫煙者について、
全世界における受動喫煙による死亡数を推計
Öberg, M. et al. : Lancet 377(9760) : 139, 2011 [L20110310132]より改変

2004年の調査では、受動喫煙の影響で、1年間に世界で約60万人が亡くなっているといわれています1)。また、日本だけみても、受動喫煙が原因となって発症する肺がんと虚血性心疾患だけで、年間約6,800人が死亡していると報告されています2)

  1. Öberg, M. et al. : Lancet 377(9760) : 139, 2011
  2. 望月 友美子:平成22年度厚生労働省科学研究費補助金 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策総合研究事業「今後のたばこ対策の推進に関する研究」
    第57巻第13号「厚生の指標」2010年11月

受動喫煙に起因する肺がん・虚血性心疾患による年間死亡数

受動喫煙に受ける場所 家庭:(肺がん) 男性201人 女性1,131人、(虚血性心疾患) 男性206人 女性1,640人、家庭:(肺がん) 男性448人 女性340人、(虚血性心疾患) 男性1,366人 女性1,471人 合計6,803人
対象:
人口動態統計(2008年)、国民健康・栄養調査(1999-2008年平均値)など、受動喫煙の曝露割合および相対リスクに関する公表データに基づいて、日本における受動喫煙に起因する肺がん・虚血性心疾患の死亡数を推計した。
家庭内での受動喫煙起因年間死亡数だけでも、全体の約半数の3,178人が死亡しています。また、2疾患による死亡数に限定したデータであり、実際の受動喫煙の被害はもっと広範にわたります。
望月 友美子:平成22年度厚生労働省科学研究費補助金 循環器疾患・糖尿病等生活習慣病対策
総合研究事業「今後のたばこ対策の推進に関する研究」
第57巻第13号「厚生の指標」2010年11月

受動喫煙による肺腺がんのリスクは2.03倍になります

夫の喫煙が非喫煙女性の肺腺がん発症リスクに及ぼす影響

夫からの受動喫煙 過去喫煙者(過去に受動喫煙があった場合でも)約1.5倍 喫煙者(受動喫煙なしの場合と比較して)約2倍!
対象:
配偶者による受動喫煙の曝露がある生涯非喫煙女性(40~69歳)28,414例
方法:
多目的コホート研究。肺腺がん発症リスクと夫の喫煙との関連を検討。
多変量補正(年齢、研究地域、アルコール消費量、肺がんの家族歴、閉経の有無)
Kurahashi, N. et al.:Int J Cancer 122:653, 2008 より作図

タバコを吸っている人が肺腺がんになりやすいことは知られていますが1)、タバコを吸わない同居者も肺腺がんのリスクが高まるのを知っていますか?

タバコを吸わない妻が、喫煙する夫を持つ場合、吸わない夫を持つ妻に比べて肺線がんになるリスクが2.03倍に高まるとの報告があります2)

家庭内での喫煙は、家族への影響を考える必要があるでしょう。

  1. 喫煙の健康影響に関する検討会編:喫煙と健康 喫煙の健康影響に関する
    検討会報告書 平成28年8月
    https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10901000-Kenkoukyoku-Soumuka/0000172687.pdf 2022/7/6参照
  2. Kurahashi, N. et al.:Int J Cancer 122:653, 2008

受動喫煙が関与しているさまざまな病気

タバコを吸わない人が、せきやたん、息切れなどが続くようになったり、気管支喘息、慢性気管支炎になる原因の1つが受動喫煙です1)

そのほかにも、以下の疾患なども、受動喫煙が関与しているといわれています。
・糖尿病2)
・メタボリックシンドローム3)
・精神疾患(うつ病・うつ状態)4)
・認知機能低下5)

喫煙は周囲の人にまで害を及ぼします。これを防ぐために、タバコの生活を見直してみませんか?

1)喫煙の健康影響に関する検討会編:喫煙と健康 喫煙の健康影響に関する 検討会報告書 平成28年8月
https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10901000-Kenkoukyoku-Soumuka/0000172687.pdf 2022/7/6参照
2) Hayashino, Y. et al.:Diabetes Care 31(4):732, 2008
3) Weitzman, M. et al.:Circulation 112(6):862, 2005
4) Hamer, M. et al.:Arch Gen Psychiatry 67(8):850, 2010
5) Chen, R.:Alzheimers Dement 8(6):590, 2012

受動喫煙による認知機能障害のリスク(海外データ)

【受動喫煙の程度と認知機能障害のリスク】最も高い(0.8〜13.5ng/mL)1.44倍、中程度(0.4〜0.7ng/mL)1.13倍、軽度(0.2〜0.3ng/mL)1.08倍、最も低い(0.0〜0.1ng/mL)1.0
  • ※ 受動喫煙の程度は、唾液中のコチニン(ニコチンの代謝物)の濃度により次の4グループに分類
    0.0~0.1ng/mL:最も低い、0.2~0.3ng/mL:軽度、0.4~0.7ng/mL:中等度、0.8~13.5ng/mL:最も高い
対象:
50歳以上の非喫煙者4,809例
方法:
受動喫煙の程度と認知機能の関連を調査。多変量解析(年齢、性別、教育、検査の間隔、民族、手を使う仕事、純資産、喫煙歴、肥満、飲酒、運動不足、抑うつ症状を補正)
Llewellyn, D. J. et al.:BMJ 338:b462, 2009 より作図

喫煙・受動喫煙による精神的苦痛のリスク(海外データ)

【喫煙者の精神的苦痛のリスク】2.15倍 【非喫煙者:受動喫煙レベルと認知機能障害のリスク】高度1.49倍、中等度1.30倍、軽度〜中等度1.23倍、受動喫煙なし1.0
  1. 唾液中のコチニン濃度により、受動喫煙なし(≦0.05μg/L)、軽度~中等度(0.06~0.30μg/L)、中等度(0.31~0.70μg/L)、高度(0.71~14.99μg/L)、喫煙者(≧15.00μg/L)に分類
対象:
イギリスおよびスコットランド在住の精神疾患の既往のない非喫煙者5,560例(平均年齢49.8歳)および喫煙者2,595例(平均年齢44.8歳)
方法:
喫煙および受動喫煙と精神的健康の関連について調査。General Health Questionnaire 12項目版のスコアが3点以上を精神的苦痛と定義。また、喫煙および受動喫煙と精神科入院の関連について5.9年間にわたり追跡調査した。解析(年齢、性別、運動量、飲酒、BMI、社会的地位、慢性疾患を補正)
さらに精神科入院のリスクは… 非喫煙者のうち、受動喫煙レベルが低レベル(0.70μg/L以下)の人に比べ… 喫煙差h3.74倍、受動喫煙レベルが高レベル2.84倍
  1. 唾液中のコチニン濃度により、受動喫煙なし(≦0.05μg/L)、軽度~中等度(0.06~0.30μg/L)、中等度(0.31~0.70μg/L)、高度(0.71~14.99μg/L)、喫煙者(≧15.00μg/L)に分類
  2. 低レベル:受動喫煙レベルの「受動喫煙なし」~「中等度」分類に相当
    高レベル:受動喫煙レベルの「喫煙者」分類に相当
Hamer, M. et al.:Arch Gen Psychiatry 67(8):850, 2010 より作図